過敏性腸症候群(IBS)は、器質的な病変の認められない機能的慢性消化管疾患であり、原因は不明です。
人口の約10%がかかっているとされ、主な症状は腹痛や下痢・便秘といった便通異常を伴う消化管運動異常や知覚過敏であり、多くの場合、不安やうつ状態などの心理的異常を併発します。IBSは、下痢型IBS、便秘型IBS、下痢と便秘が交互に起きる交替型IBSに分類され、男性は下痢型、女性は便秘型が多い傾向にあります。
口側から肛門側に協調的な強い蠕動が起きると下痢型となり、肛門側から口側への協調性に欠ける強い逆蠕動が起きると便秘型になると考えられています。
本疾患は生命予後には影響を与えませんが、生活の質を著しく低下させるため、より有効な治療薬の開発が望まれています。
現在、国内ではIBS治療薬としては、下痢型IBSに対して5-HT3受容体拮抗薬のラモセトロン塩酸塩(商品名:イリボー)と、便秘型IBSに対して粘膜上皮機能変容薬のグアニル酸シクラーゼC受容体アゴニスト薬のリナクロチド(商品名:リンゼス)があります。どちらも対処療法薬であり、根本的な解決には至っていません。
また、過敏性腸症候群は前述の線維筋痛症に約30-50%の割合で合併することが報告されています。